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始業式前日に先生から送られてきた動画

こんにちは。新渡戸文化小学校note編集部の染原です。多くの学校が夏休みを終え、2学期をスタートさせた頃かと思います。新渡戸文化小学校でも、9月1日に始業式を執り行い、1ヵ月半ぶりに子どもたちの元気な声が校舎に響き渡りました。

9月1日の始業式の日に、元気に学校に集まった子どもたち。

夏休み明けに元気に学校に来てほしい

始業式の前日。全校児童にある動画が届きました。タイトルは「せんせいからのスペシャルムービー!2学期まってるよ!」。添えられたメッセージにはこうありました。

明日からいよいよ2学期が始まります。楽しみな子も、ちょっとイヤだなと思っている子も、様々だと思います。明日、笑顔で学校に来てくれたらいいなという思いで、教員でムービーを作成しました。

再生してみると、先生たちが歌ったり、踊ったり、先生たち自身の夏休みの楽しかったことを話していたり。すべての学年担任の先生たちが画面の向こうにいる子どもたちを想像して楽しそうにメッセージを送ってくれています。観ているだけでこちらが笑顔になってしまう動画。新渡戸文化小学校に通う私の息子も、「あ、凜先生だ!」「面白い替え歌だね」と言いながら楽しそうに視聴し、終わった後は画面に向かって拍手をしていました。

歌いながら行進し始める1年生の先生たち。

この動画を作成した背景には、夏休み後に不登校になってしまう子どもが少なくないことや自ら命を絶ってしまう子どももいるという社会背景があったといいます。

発案者で5年生の担任の沼尻淳先生は、昨年からこのアイデアを温めていました。「昨年の夏休み終了時に、子どもが夏休み明けに自ら命を絶ってしまうことが多いというニュースを観て、そのときから、子どもたちに対して何かできないかと考えていました。昨年はニュースを観たときには夏休みもほとんど終わりかけだったので、何もできず、今年は何かやろうと思っていました」(沼尻先生)。

新渡戸文化小学校でも、夏休み明けは特に子どもたちとしっかり向き合い、少しの変化も見逃すまいと先生たちの間にも緊張が走る日です。

「なんでやるの?」「やる意味あるの?」は一切なし

9月1日の始業式を前に、沼尻先生は先生たちにメッセージを送ります。「子どもたちが2学期に元気に学校に来られるよう、動画を作りませんか」。

その後先生たちが全員集まる8月31日に改めて皆に説明し、各学年で動画を撮影することを依頼。当日のうちにすべての動画を回収しきったといいます。各学年の動画が集まってくるまでにかかった時間はわずか4時間程度。各学年の先生たちはその時間で、どんな動画にするかを考え、撮影もこなし、沼尻先生に送ってきたといいます。その日に沼尻先生が編集し、午後には全校児童に配信されました。

こうしたことをやろうとすると、先生たちにこの施策の意味を説明する時間、合意形成する時間、制作することを決めたとしても、先生たちの撮影時間や制作時間をうまくとれないことから諦める、など、様々なハードルがあるはず。「なんでやるの?」「やる意味あるの?」といった意見がでるのは、想定内ともいえます。どのように乗り越えたのでしょう。

「実は、その点は、皆無でした。『やろうと思ってますが、どうですか』と先生たちに聞いたら、『やろうやろう』『いいねいいね』という感じで、合意形成プロセスでの苦労は一切ありませんでした」(沼尻先生)

実際作成してみると、先生たちも楽しんで取り組んでくれたとのこと。先生たちのみならず、保健室の先生や校長先生、校長補佐も参加。

保健室の先生たちも参加。

こうしたことを学校全体で迅速に取り組めるのも、新渡戸文化小学校の特徴かもしれません。

子どもが「明日の学校楽しみ!」に

「学校で待ってるよ!みたいな10秒くらいの動画を想像していましたし、そのつもりで先生たちにも依頼しました。蓋を開けてみると、2年生の担任は替え歌を作って踊っているし、1年生はぬいぐるみを使った即興劇を披露してくれているし、どの学年も画面の向こうにいる子どもたちを楽しませようというのが伝わってきて、できあがった動画を先生たちみんなで観ながら笑ったり突っ込んだりしました」(沼尻先生)

先生たちが一番楽しんでいます。
「私は、3726メートルの高さにいきました!キリッ」と突如自分の夏休み自慢を始める先生。

子どもたちの評判も上々でした。始業式の日に、「先生!メッセージ、ありがとう〜!」と喜びの声があちこちから聞こえたと言います。また、始業式の日に学校に迎えに来ていた低学年の親御さんからは「動画を観る前までは、『明日から学校かあ』とやや浮かない表情をしていましたが、動画を観たあとは本当にウキウキして、『明日から学校楽しみ!』と話していました。本当にありがとうございました!」とお声がけいただいたそうです。

夏休み明け。大人も子どもも、非日常から日常に戻るときは誰しもが緊張したり、ギアチェンジが必要だったりします。無理して疲れてしまうことや、気付かずストレスを溜めこんでしまうことも少なくありません。家族や周りの友人、そして何より自分自身に目配せをして、残暑を笑顔で乗り切れるといいなと思います。

取材執筆:染原睦美
写真:橋本花織